海底水中都市とは、海底に建設される都市のことです。現在はまだ構想の段階で実用化には至っていませんが、深海には人類が直面する食糧、エネルギー、水、CO2、資源といった5つの課題を解決するポテンシャルがあるとされています。この記事では、海底水中都市の可能性と課題について紹介します。
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海底水中都市の可能性
海底水中都市は、地球表面の約70%を占める深海という未開拓の領域にアクセスすることで、以下のような可能性を秘めています。
・食糧:深海域の漁業の質と量は無限であり、深海の温度や栄養を活かして高級ブランド魚の養殖などができます。
・エネルギー:深海が持つ未利用エネルギーは無限であり、海水温度差を利用した発電などができます。
・水:深海から造れる淡水の量は無限であり、水圧を利用した淡水化などができます。
・CO2:深海のCO2処理能力は無限であり、CO2からエネルギーを生成するなどができます。
・資源:海底や海中の資源量は無限であり、人工熱水鉱床などを開発や育成することができます。
これらの可能性を活かすことで、地球規模の循環再生と人類社会の持続性を向上させることができると考えられています。
海底水中都市の課題
一方、海底水中都市には以下のような課題も存在します。
・技術的課題:高圧の水圧に耐えるだけの構造物を水中に建設することや、海水による腐食への対策などが必要です。また、閉鎖された環境でエネルギー、食料、酸素などの自給が困難であり、外部からの補給や交通手段も確保しなければなりません。
・経済的課題:海底水中都市の建設や維持には多大な費用がかかり、費用対効果が見込めるかどうかは不明です。また、海底水中都市に特異な経済活動や産業が形成されるかどうかも不確実です。
・環境的課題:海底水中都市の建設や運用によって、深海生態系への影響や汚染などが生じる可能性があります。また、海洋法や国際法などの法的枠組みも整備されていません。
以上のように、海底水中都市は多くの可能性と課題を抱えています。現在は清水建設による「オーシャンスパイラル」など、各国の企業や研究者によって様々な構想が提案されていますが、実現にはまだ時間がかかりそうです。
しかし、海底水中都市は夢ではなく現実に近づいています。2020年には日本政府が「新しい国土ビジョン」を発表し、2030年までに「日本列島再生プロジェクト」を推進することを目指しています。その一環として、「深海開発・利用技術開発プログラム」が立ち上げられました。このプログラムでは、「深海資源探査・開発技術」「深海エネルギーシステム技術」「深海生物多様性保全技術」「深海観測・監視技術」「深海基盤技術」など5つの分野において国内外の産学官連携によって研究開発を行っています。このプログラムの成果をもとに、「オーシャンスパイラル」以外にも、「シーライフ」「アクアポリス」「マリンドーム」など様々な形態や規模の海底水中都市が計画されています。
まとめ
これらの計画はまだ具体的な実施段階には至っていませんが、将来的には日本列島周辺や太平洋諸島周辺に多数の海底水中都市が建設される可能性があります。それらの都市は地球上でも最も革新的で先進的な社会を形成し、人類文明に新たな息吹を与えるでしょう。しかし同時に、それらの都市は未知数でもあり、多くのリスクや問題も抱えています。そのため、海底水中都市を実現するためには科学技術だけではなく、政治・経済・法律・倫理・文化・教育など様々な分野から多角的かつ総合的なアプローチが必要です。そして何よりも重要なことは、人間と自然という二つの存在が共存し共生することを目指すことです。
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